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小説三国志を読んで、孔明・劉備はこうしなかったんだということも、少し、正史を読み解くと理解が深まることも多い。

・夷陵の戦いでなぜ、劉備は孔明をつれていかなかった?
・荊州防衛は関羽じゃなく、趙雲のほうが良かったのでは?
・劉禅より劉封が跡取りしたほうがよかったんじゃ?
・あれ?張郃って前も死んでなかった?

など。

正史三国史とフィクション三国志でイメージが違う人物を少し紹介。

フィクションというのは、広い意味で小説・漫画(主に横山光輝)・ゲームを言うことにします。

劉備

フィクション

漢朝と民のために戦う正義感。

人徳溢れ、でもちょっと優柔不断なこともあるが基本的に聖人君子(清く正しく美しく)。

戦争は得意ではなく、諸葛亮や周りの将軍たちがサポート。

コーエーゲームでは、魅力以外は75点。人徳だけがある人。

晩年は関羽のため戦争をおこし、これまでの劉備らしくもなく見える。

劉封をはやまって殺してしまい嘆く。

実際の劉備

漢朝と民のために戦う正義感。人徳溢れることも変わらないが、聖人君子というより、面倒見のいい仁義のために戦う義侠の大親分。

初期に張飛が督郵(役人)をぶん殴り、劉備がやってしまったことは仕方ないと嘆いて出ていくシーンが、役人の非礼にキレてぶん殴ったのは実は劉備というのは結構有名。

戦争もつよく、対等の兵数ならほとんど負けたことがない。(夷陵の戦いくらい)

戦略をたてるのは苦手だが、戦術レベルでは曹操に劣らない。

曹操自身も「劉備は自分と互角、策を思いつくのが劉備のほうが少しおそいだけだ」と評価。

徐庶が破った夏侯惇・于禁も実は劉備が破った。

諸葛亮の戦の手柄は実際はほとんど劉備の手柄。

だから、曹操も最期まで劉備は倒せなかったし、諸侯も劉備を喜んで迎え、劉備を前線に送った。

また、劉備没後は蜀は領土を広げることができなかった。

同じように関羽のため戦争を起こすが、演義にように聖人君子ではなく、正義の大親分という感じなので、大義より、漢朝より、最期は自分の弟分のために動く行動に違和感がない。

劉封との親子間は微妙。

当時、後継者問題は非常に難しい問題だった。袁紹・孫権・劉表みな後継者問題で滅んでいる。長子が死んだ曹操が逆にうまく行ったくらい。
そんな時代で皇族の養子の長男というのは実に微妙な問題で、家のためにはいないほうがいい立場だった。

曹操

フィクション

前半のダークヒーロー。

後半、(というか諸葛亮登場後)は悪役に。

万能の天才。

嘘つきのプロ。

人材コレクター。

劉表の子、劉琮を用がなくなったら殺すなど冷血。

晩年は老害化

実際の曹操

フィクション以上に万能の天才。

政治・武道はもちろん、文化人として一級品。

なんでもできるリアルチート。

法にも厳しく、罪人の境遇に涙を流しても、刑の執行をやめなかった。

晩年も質素。

曹操の子どもたちは、杜甫・李白以前は詩の神様。

実際に現存する最古の孫子は曹操が注釈したもの。

ただし、実質上、歴史で最初の簒奪をしたと評価され、曹操が評価されたのは20世紀に入ってから。

ある意味、2000年近く、歴史の悪役。

三国志のゲームでは野望高く、義理が低い設定が多いが、実際の曹操は自分から約束を破ったことはなく、このへんが信長とも同じで日本人の心をくすぐる。

劉琮も殺しておらず、家臣はもちろん、敵のために涙を流すほど情に厚い。

孫権

フィクション

小説・漫画では赤壁~関羽討伐以降は基本的に地味。

魏・蜀の戦いを横目でみつつ、漁夫の利をねらいつつ、何もせず終わる。

若く、熱い指導者として描かれる

実際の孫権

公人としては、決断力もあり、魏・蜀あいてにうまく立ち回った優秀な政治家。

戦争も弱くはない。

私人としては、アレな人。(キ●ガイ)

酒を飲んでのんで大騒ぎ、もう飲めないとぶっ倒れている家臣にもさらに無理やり飲ませる⇒呆れて立ち去る張昭⇒「おいおい、楽しんでいるのに、白けるなあ」と呼び止める⇒張昭「古代の暴君もそんな遊びをしてましたなあ」と強烈な皮肉を言われる⇒しぶしぶ宴会中止

酔っ払って部下を殺そうとする。⇒諌めた部下に対し、「曹操だって、殺したんだ、殺して何が悪い!」と逆ギレ⇒酔いが冷めた後、「酔った自分の命令は全て無効」という命令を出す。

張昭に理不尽なことをしてしまったので、詫びに行く⇒張昭がすねて家を出てこない⇒逆ギレして、張昭の家を火攻め⇒それでも、出てこないので慌てて消火する。

自分な好きな子供を後継者に任命し、しかも撤回。自分が原因なのに、跡目争いをした子供を死刑に。後継者決めで、正論を解いた救国の英雄、陸遜を死刑に。さらに、自分がかわいがっている8歳の子供を皇帝に⇒呉滅亡

諸葛亮

フィクション

非の打ち所のない完璧超人。

戦争も内政もできる。

戦争は奇策が多い。

実際の諸葛亮

やはり、完璧超人。

奇策よりも確実に勝てる方法を選ぶ。

陳寿が「孔明はホントは戦争下手だったんじゃないの?それが証拠に魏に一度も勝てなかったでしょ?」と書いたのが「孔明戦争下手だった説」の議論の始まり。

ただし、陳寿の頃には諸葛亮はすでに伝説の人だった。

戦力10倍以上の魏が諸葛亮存命中は攻めてこなかったこと、孔明没後は曹叡の政策方針が変わったこと、司馬懿が防戦するしかなったことや、孔明の陣跡を見て、「孔明は天才だ」という言葉を残していることを考えると、下手というより、言い伝えが過剰になってしまった、あるいは本来劉備の手柄も孔明の手柄になってしまったというのが妥当か。

後世はもちろん、当代からも最高の評価を受けている。

属を攻め、後に魏に反乱した、野心の塊である鍾会も、孔明のたたりをおそれ、孔明の墓には近づくなと厳命し、手厚く祀った。

正史の著者の一人裴松之も諸葛亮が、「魏に仕えていたら司馬懿・陳羣(後に唐の時代まで採用された人事制度を作った人)でも叶わなかった」と評価する。

また、統一者、司馬炎も「諸葛亮が自分にいれば、もっと自分は苦労しなかっただろう」と評価する

関羽

フィクション

フィクションというか、伝説がそのまま小説に取り込まれている。

また、武勇が少し誇張されている。
華雄討伐⇒実際には孫堅が討伐
顔良・文醜討伐⇒顔良はうったが、文醜は打っていない
五関突破⇒記載なし

など

三国志の人物で唯一神格化されている。

実際の関羽

とわいえ、逸話はともかく実際にもやはり最強の軍神だった。

しかも、都督としては、フィクション以上に周囲から恐れられていた。

相対的に趙雲・黄忠あたりが誇張されていることを考えると、さらに最強の軍人だった。

そうでないと、神格化されない。

趙雲

フィクション

武将では人気ナンバーワン。

永遠の若武者。

地位としては、関羽・張飛にならび、しかも関羽・張飛とちがい晩年もポカすることなく大活躍。

あれ、でも、年齢計算したら、劉備より年上じゃね?

実際の趙雲

正史の記載はとにかく簡素。

演義の補正が強く、活躍はだいたい演義の描写。

関羽・張飛より格下で年齢もよくわからない。

馬超

フィクション

父の馬騰をはじめ一族を、曹操に殺され、敵討ちのため、挙兵するも曹操に敗れた悲劇(重臣)の武将。

張魯に身を寄せたが、李恢に説得され、劉備に下る。

礼儀正しく誠実で熱い青年像。

実際の馬超

曹操が漢中に攻めてくるのではないかと、不安になり挙兵。

曹操に返り討ちにあい、その責任を取らされて、父や一族は殺された。

事実は全くの逆である。

小説や横山光輝版で馬騰が早々暗殺計画暴露後も、曹操に捕らえられていない矛盾があるのはこのため。

曹操は後世に誤解されている。

しかも、張魯では目がないと、自分から劉備に下る。

また、信憑性はともかく、初対面の劉備を「玄徳」と呼び捨てにして、関羽・張飛の怒りをかったといわれるくらいの無礼者。

ただし、フィクション以上に武名は轟いており、馬超が劉備のもとに来たというだけで、劉璋は降伏した。

魏延

フィクション

劉備に憧れて劉備に下るが、初対面から諸葛亮に嫌われる。

その後も、何かと孔明に反抗。

実力があるから仕方なく、用いられるが、最期は魏に降ろうとしたのを、孔明から託されていた策で馬岱に殺される。

関羽・張飛・趙雲より格下。

嫌われ役。

実際の魏延

魏討伐では孔明と意見があわなかったが、そこまでお互いきらっているわけではない。

特に魏延は劉備に高く評価されていた。

劉備が漢中王になってから、漢中王の都督を任命することになった。

だれもが、張飛が任命されるとおもっており、張飛もそのように考えていた。

しかし、実際には魏延が任命され、魏延も劉備の期待に答えた。

孔明没後、楊儀と争い殺されたが、楊儀との中は最悪だったが、劉備への忠誠心が高く、魏に降ろうとしたわけではない。

楊儀にはめられた感が強い

その後、楊儀は魏延の首を踏みつけ、「バカが、これで悪事はもうできない」と詰り、さらに、孔明の後継者になれなかったため「こんなことなら、孔明が死んだときに、軍を率いて魏に下ればよかった」と発言して流刑にされ、さらに流刑地から劉禅に他人を誹謗する文書を送りつけるような人間だった。

周瑜

フィクション

作品により、描写がまちまち。(美男子というのは共通)

そもそものはじまりは、演義で諸葛亮の噛ませ犬になったこと。

横山光輝の周瑜が特に悲惨。

それが各種メディアで再評価。

個人的にはいくらなんでもコーエー三国志の周瑜は強すぎ。

実際の周瑜

赤壁の戦いの実際の指揮官。

各合戦の手柄が諸葛亮に取られているが、やはり大局的にみると、諸葛亮の手玉に取られたと言わざるをえない。
(結局、荊州を劉備の取られたので)

益州をせめ、南方一体を平定するという志半ばで描写。

陸遜

フィクション

登場時、呉の重臣たちから無名の若造扱いされる。

呂蒙とともに華々しいデビュー。

その後も、夷陵の戦いでは劉備を追い詰める。⇒その後、孔明の妖術、石兵八陣で痛い目にあい、孔明にはかなわないと撤退。

その後も、魏軍を苦しめるが、最期は描かれない。

実際の陸遜

同じように活躍するが、関羽との戦いのときは40代なので、若造ではない。

戦争ではなんども魏を打ち破り、呉軍最高の司令官となる。

孫権が後継者決めの時、正論で何度も諌めるが、アレな孫権の逆鱗に触れ憤死する。

その後、陸遜の子供が、無実を晴らすと孫権は泣いて謝罪した。

司馬懿

フィクション

諸葛亮最大のライバル。

軍師として描かれる。

孔明に手球にとられたり、

三国志

野心、あふれる軍師として描かれる。

フハハハ!

司馬懿

キャラ付けが面白い。

実際の司馬懿

野心溢れるどころか、家が金持ちの名門だっため、働きたくなかった。

それを才を買われた曹操に無理やり士官させられる。

本人はそのつもりはなかったが、優秀過ぎて、気がついたら自分以上の存在が周りにいなくて、降りかかる火の粉を払っていたら天下をとりました、という感じ。

軍師として描かれるが、実際には将軍。戦争と政争の天才。

徳川家康のように、最期は美味しいものを食べたというイメージを持つ人もいるだろうが、徳川家康より、純粋な軍人。

張郃

フィクション

袁紹より、曹操軍にくだり、いつのまにか重要な将軍になっていく。

吉川英治版では序盤、生死がはっきりせず、扱いが適当。

3度死亡の描写があり、2度なんの脈絡もなく生き返る。

実際の張郃

曹操軍になってからは着実に功績をあげる。

街亭の戦いで実際に馬謖を破ったのは司馬懿ではなく、張郃。(司馬懿は関わっていない)

しかし、最期は諸葛亮の策にはまり射殺されたのは概ね同じ。

史実、小説ともにオネエキャラであったという描写はない。(あってたまるか)

張郃